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 何を言われるのかとびくびくしながら待つ俺と、何が楽しいのかにやにや笑う加治。

「生きてて楽しい?」
「え……?」

 何でそんなこと聞くんだろうか? 意図が分からず俺はじっと加治を見つめる。

「……何か言えよ」

 眉を顰め、イライラした様子で俺を睨むと、大股で教室に入ってきた。何か言えよと言われても。

「……楽しい」

 楽しくないとは答えたくなかった。俺だけはそれを認めてしまっては駄目だ。

「嘘くさ」

 鼻で笑うと、箒を蹴る。そんなに強く持っていなかったので、箒はからからと音を立てて転がった。

「惨めだよな。お前」

 俺は無言で箒を拾った。いちいちこんな言葉に反応していられない。さっさと掃除して、帰りたいのだ。

「お前はいつだって一人だ」

 はっとして梶を見る。加治は何を考えているのか分からない顔で俺を見ていた。

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