29

 予定よりも早くプレゼントが決まり、俺も月島もプレゼントを購入した。黛のことが気がかりだったので、俺は月島と別れ、急いで家へと帰った。

「ただいま!」

 ドアを開け漸く慣れてきた帰宅時の挨拶を口にし、早足で奥へ向かう。小走りだったのもあるが、緊張でドキドキと心臓が煩く鳴っている。
 黛はデーブルに頬杖をついてテレビを観ていたようだ。俺が帰ってきたのを知ると、こっちに目が向く。飯を食った様子はない。俺を待ってくれていたんだとほっこりする。

「思ったより早かったな」

 黛は意外そうに呟く。俺は笑みを浮かべた。「用事が早く済んだんだ」そして俺は黛に後ろに隠していたものをずいっと両手で差し出す。小さな袋をじっと黛が見つめた。

「何これ」
「黛に…ぷ、プレゼントと言いますか…」
「誕生日じゃねえけど」

 黛は自分がプレゼントを貰った意味が分からないようで、訝しげに眉を顰めた。

「今までプレゼントしたかったけどできなくて。今なら貰ってくれるかなって、買ったんだ」

 本音をそのまま打ち明ける。黛は無言で袋を受け取る。そして袋を開け――にやりと笑った。

「へえ、いいじゃん」

 プレゼント――スカルリングを気に入ってくれたようで、早速指につけている。サイズも大丈夫のようだ。俺はほっとして笑みを浮かべる。黛はジャラジャラとアクセサリーをつけるタイプではないが、リングをつけることは度々ある。ということで、スカルリングを購入した。

「俺、なんもやれねーけど」

 黛はふと真剣な表情で俺を見つめる。俺はドキドキしながら言葉を待った。

「もうお前を心配にさせるようなことはしねえ」

 黛の指が俺の顎にかかる。リングがきらりと光った。

「だからお前も、俺以外見るなよ」

 俺は返事の代わりに、目を閉じると、ふ、と笑う音が聞こえて――唇が重ねられた。









fin.

長らくお付き合いくださりありがとうございました!




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