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「あいつ、根に持ってんのかあのこと…」

 「いや俺のこと気にくわないだけか」月島は呆れた様子で呟いた。

「まー、あれからなんもないみたいで安心したよ」
「俺さ、本当はあんまり期待してなかったんだよ。性格なんてすぐ変わるもんじゃないしさ。口だけでなら何とでも言えるって思って」
「うん」
「でも違った。黛は変わってくれたんだ。俺のために……っていうのは自惚れかもしれないけど」
「いや自惚れじゃないと思うぞ。まあ、変われるならはよ変われって感じだけど…きっかけが欲しかったんだろうな。あいつプライドすげー高そうだし」

 確かに黛のプライドの高さは俺の知り合いの中でも一番と言っていいほどである。月島と黛がそれぞれ関わることはほとんどなく、間接的に関わっていただけだが月島は黛のこと、良く理解してるなと思う。

「…あ、この店入っていいか?」

 月島が足を止め店を指さす。雑貨屋のようだ。俺が頷いたことを確認すると、月島はその店に足を向けた。

「そういえば、何を買うんだ?」
「プレゼント」
「あ、彼女に?」
「まーな」

 月島は少し照れくさそうに答える。…そういえば、俺、黛に何かプレゼントしたことも、されたこともないような…。黛はそういうことする奴じゃなかったし、俺もプレゼントなんか受け取って貰えないと思っていたから…。

「俺も…なんか、買おうかな。黛に」
「おお、いいんじゃね?」

 今なら受け取って貰える。俺の中にそんな確信があった。

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