27

 白川を振ってから一週間。俺は黛と平和に暮らしていた。特に何もなかったが、とても幸せだった。怖いくらいに黛が優しいのだ。今まで飯を一緒に食べることなんてなかったのに、今は時間が合わない時以外は一緒に食べている。しかも。しかもだ。家事を俺に任せて何もしてなかったのに、手伝ってくれるようになったのだ。

「あ、黛、今日俺ちょっと帰り遅くなる」

 黛はテレビから視線を外し、俺に目を向ける。

「なんかあんのか」
「月島とちょっと用事があって…」
「あいつと?」

 目を細めて不機嫌そうな顔になる。俺はやっぱり月島のことあんまり好きではなさそうだなと思いながら、苦笑する。

「なんの用事だよ」
「ええっと…買い物に付き合うことになってて」
「…ふーん」

 黛は興味なさげに呟くと、視線をテレビに戻す。良かった。もっとなんか言われるかと思ったが、そうでもなかった。機嫌悪そうだけど。

「夕飯は食べるから」

 黛は「ああ」とだけ答えた。












「よ」

 月島は俺を見つけると、手を挙げた。

「よう」

 俺もそれに答えて、足を止める。月島は弄っていたスマホを仕舞うと、笑みを浮かべた。

「いやあ、悪いな。付き合ってもらって」
「いや、大丈夫」
「あいつなんか言ってなかった?」
「言ってはなかったけど…まあ、なんか、不機嫌にはなったな」

 苦笑を浮かべながら黛の様子を述べると、月島は肩を竦めた。

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