18

 俺は信じられない気持ちで黛を見上げた。

「……黛、今なんて?」

 黛はじろりと俺を睨む。

「……別れなくていいだろ」
「黛は俺と別れたいんじゃない…のか?」
「そんなこと言ってねえ」
「お、俺のこと好きだから……とか? な、なーんて」

 そんなことあるわけがない。ただ俺が使えるから側に置いてるだけだ。はは、と笑うが、黛は表情を変えないまま口にした。

「そうだっつったら」
「えっ、えええ!?」
「うるせえ」

 鬱陶しそうに睨まれたが、俺は黛の言葉に驚きそれどころではない。

「ま、黛は俺のこと嫌いだとばかり」
「嫌いだったらとっくに切ってる」
「じゃあ――なんで、浮気なんか……」

 心臓がばくばくと煩く鳴り始める。黛は本当に俺のことが好きなのだろうか?

「お前は……」

 黛はそれだけ言うと、気まずそうに口を閉ざす。俺は黛の言葉を待った。



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