17

 ぐい、と腕を引かれる。俺は抵抗できないまま黛に引きずられる。

「ま、黛」
「黙ってついてこい」

 俺は言われるがままに口を閉ざす。っていうか講義サボれってことか。これが必修科目で学科の教授じゃなかったら代返頼めるのにな。……仕方ない、今日は諦めよう。

「宇津木、頑張れよー」

 月島が俺の背中にのんびりとした声をかけた。






 久しぶりに帰って来た家は、俺が予想していたよりも荒れていた。これは掃除しがいがありそうだ……って、俺そんなに掃除好きじゃないけど。
 さて。ここまでまったく会話がなかったわけだけど。いつもならあんな目立つところでああいう風に手を掴んでどこかへ行くなんてことはなかったのに、やっぱり今日の黛はどこかおかしい。

「……あの男のところへ行ってたのか?」
「し、……白川? いや月島の家にいた…けど」
「……スマホも持っていないで、勝手なこと言って出ていきやがって」

 俺は黛を凝視する。別れるというのは、黛にとって勝手なことだったのか? スマホを持っていたら連絡をくれたのか?

「……別れるなんて、言うなよ」

 俺は耳を疑った。

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