12

 今までの俺だったら、黛の言葉にも耐えられた。でも白川の優しさを受けることが多くなったせいか、泣いてしまい、感情に任せて別れるとまで言ってしまった。黛が驚くのも無理はない。
 そして、黛と一方的にではあるが、別れてしまった俺。もう既に後悔していた。俺はどんよりとした空気を纏ったまま月島の家に向かって足を進める。とりあえず家には帰れない。月島の家に泊まらせて貰おう…。俺はスマホを取り出そうとして――何も持っていないことに気付く。飛び出してきたからな。仕方ない。いなかったらいなかったで家の前で待たせて貰うか。今日はバイトの日じゃなかったと思うし、飲み会がなければそんなに遅くならないだろう。俺はポケットに手を突っ込んで溜息を吐いた。








 ピンポン、と音が鳴る。さて、いるだろうか。暫し待っていると、中からパタパタと音が聞こえた。良かった、いるみたいだ。

「はいはいっと……あれ、宇津木」

 ドアを開けた月島は、俺を見て目を丸くする。俺は片手を挙げた。

「よ」
「どうした?」
「……突然で悪いんだけど、泊めてくんない?」
「え?」

 月島は不思議そうに目を瞬いた後、ドアを全開にした。

「ま、とりあえず入れよ。話は中で聞くから」

 鋭い月島のことだ。何かあったことを悟ったんだろう。俺はありがたく部屋に上がらせて貰うことにした。

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