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 白川は俺の反応を見て苦笑する。

「あ、本当に僕絡みなんだ」
「え、カマかけたのか?」
「うん。……そっかぁ、黛くんのことできみがそういう顔するの嫌だなぁ」

 白川の言葉にどう反応すればいいか困っていると、白川が残念そうに口にする。

「どうやったら好きになってくれる?」
「どうって……俺は黛が好きだし……」
「僕が何をしてもきみは黛くんを好きで居続けるってこと?」
「それは……」

 勿論、と言いきることができなかった。俺は眉を顰め口を閉じる。……黛のことは好きだけど、それがずっと続くとは限らない。黛とは正反対な白川のことを選ぶかもしれない。でも俺は黛のことを好きではなくなった自分が想像できなかった。
 俺が何も言えないでいると、白川はにこりと笑った。

「僕にも望みはあるみたいだ」

 白川の笑みにどきりとする。俺は実は白川の顔が結構好きだ。性格も良いし。俺が白川のことを断りきれない理由は恐らくこれが関係しているんだろう。

「頑張るから」

 白川は笑顔のまま、言葉を続けた。

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