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「チッ」

 黛は不愉快そうに舌打ちすると、嘲笑する。

「お前、ほんと男なら誰でもいいみてーだな」
「……え?」

 ずがん、と黛の言葉が岩のように俺の頭に振って衝撃を与える。

「ちが…俺が好きなのは黛だけだ」
「どーだか」

 は、と鼻で笑うと、黛は俺の体を押し退けて苛立った様子でドアを開け出ていった。
 ずっと黛が好きだと言い続けたのに、どうやら黛には全然伝わっていなかったみたいだ。俺は自嘲すると、重い体を動かして部屋の奥へと向かった。
 その日、黛は帰ってこなかった。







「元気ないね」
「――え、あ、……白川」
「知り合った時と同じ顔してるよ」
「え、そう? 気のせいだよ」

 はは、と笑みを浮かべるが、白川は心配そうに俺を見つめる。

「何かあった?」
「いや、何も――」
「黛くん?」

 鋭い。いや、俺が分かりやすいだけか。俺は苦笑を浮かべ、ちょっと、と口にする。白川が関係しているなんて、言えるわけがない。

「いつものことだから」
「それって、僕が関係してる?」
「えっ!?」

 な、何故分かった!? 俺は目を見開き白川を見つめる。

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