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「あーっ、くそ、負けた!」

 俺はゲームオーバーの画面を見てがっくりと肩を落とす。俺、ゲーム下手すぎるだろ。

「ん?」

 ガチャ、とドアが開く音がし、俺は顔を上げる。……帰ってきたんだ、黛。顔が緩んだ瞬間――。

「……なの?」
「……な」

 話し声が耳に入る。何を話しているのかまでは分からないが、この声が女のものということは分かった。…最悪だ。
 俺は無言でゲームの音量を上げる。止めようと思ったけど、何かして暇を潰さないときついからな。

「……はぁ」

 俺、今日何回溜息吐いてんだろ。白川に優しくされたから、今この状況がきついのかも。また直ぐ耐性がつくからそれまで我慢だな。
 ……やっぱり惜しいことしたかも、って思ってしまう俺がいる。…よし、考えるのはもうやめだ。俺はコントローラーを握り締めてゲームを再開した。





 ぐう、と腹が鳴る。……腹減ったなー。そろそろ夕飯の時間だけど、どうしよう。黛、まだ部屋にいるよな…どこぞの女と。今日は一人前で良さそうだ。ささっと作ってささっと寝てしまおう。
 俺はゲームとテレビの電源をオフにし、立ち上がる。ずっと座っていたから尻と腰が痛い。その場でぐっと背伸びをした。

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