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「おい」

 ふ、と意識が浮上する、目を開けるとぼんやりした視界に誰かが映る。

「おいっ」

 苛々した声で頭が覚醒する。はっとして飛び起きれば、腕を組んだ黛が俺を見下ろしていた。
 カーテンが閉められていて、電気も点いている。掃除やらなんやらしていたら疲れていたのか寝てしまっていたようだ。そういえば全然寝てないからな…。

「……ふん、今日は帰って来たみてーだな」

 俺を咎めるように睨むと、踵を返す。俺は慌ててその背中に声をかけた。

「ま、黛――出掛けるのか?」

 ぴたりと足が止まる。黛は振り返らないまま呟いた。

「…シャワー浴びるだけだ」
「あ、そ、そうか」

 ほっとして笑みが零れる。黛は再び足を進めると、そのまま洗面所に入っていった。黛、今帰ってきたんだろうか。何か食べてきたかな。欠伸をしながら立ち上がると、冷蔵庫からサラダとハンバーグを取り出す。レンジでチンして、俺は席についた。








 ほどなくして黛が風呂から上がったきた。俺と料理をちらりと見ると、黛は俺の向かいに座る。久しぶりに一緒に飯を食べる気がする。俺は嬉しくて黛をじっと見つめた。

「……んだよ、見んな」
「ご、ごめん。……いただきます!」

 俺が手を合わせている間に黛は箸を手に取りぱくぱくと食べ始める。会話はなかったが、とても楽しい時間だった。

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