15

 荷物を持って白川の部屋を訪れると、白川は笑顔で俺を迎えてくれた。月島は俺が白川と暮らすことを喜んでくれた。ただ俺が邪魔だったから喜んだやけじゃない……と思いたい。

「嬉しいなぁ、宇津木くんと一緒に暮らせるなん て」

 本当に嬉しそうな顔で言われるので、俺も嬉しくなる。へら、と笑うと白川の腕が俺の背中に回る。ぎゅ、と抱き締められ心臓が跳ねる。

「し、白川」
「――稔って、呼んで」
「み、みの、る」
「僕も光って呼んでいい?」
「勿論」
「光……呼んだだけ」

 ば、バカップルかよ。恥ずかしくて顔に熱が集まる。……それにしても誰かに光と呼ばれるのはいつぶりだろうか。俺の周りで呼ぶのは、黛くらいだった。と言っても黛はほとんど「おい」とか「お前」とかだったから、実質呼ばれていないのと同じだ。――そういえば、この前別れを切り出した時に久しぶりに呼ばれたような気がする。……まあいいか黛のことは。
 というか今更だけど稔っていうのか白川って。

「光、キスしていい?」
「お、お前……いちいち訊くなよ」

 抱き締められたまま耳元で囁かれ、ぞくりと背筋が震える。「耳赤いよ」と楽しそうな稔の声。

「し、していいよ」

 ぼそぼそと呟くと、稔はくすりと笑った。稔の顔が近づいてくるのを――俺は目を瞑って、静かに待った。







fin.

白川編終了!


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