12

「ということが、あってだな…」
「へえー…」

 照れながら報告すると、月島は不味いものでも食べたような顔で相槌を打った。

「それでキスしたのか?」
「した…」
「意外に手早いんだなあ、あいつ」

 月島はけらけらと笑う。俺は苦笑を返して、スマホを点ける。この後、白川と会うことになっている。その時間まで、月島と暇を潰していたところだ。

「嬉しそうな顔しちゃって」
「うわ、そんな顔に出てた?」
「出てる。幸せオーラってやつ? 羨ましいわ」
「月島だって彼女と仲良いだろ」
「あいつは彼女っていうか、なんかなあ、もう家族みたいなもんだし」

 月島の彼女は違う大学だが、月島に紹介してもらったことがある。可愛いというよりは美人で優しい人だった。どうやら幼馴染みらしい。そして同棲している。だからもう家族みたいなもの、なんだろう。

「お、来たぞ」

 どき、とする。振り向くと、爽やかな笑みを浮かべた白川が近づいてきていた。

「ごめんね、待たせて」
「いや、全然。月島と話してたし」
「よ」
「月島くん。こんにちは」

 ニヤニヤとしている月島を不思議そうに見たが、にこりと笑う白川。俺は立ち上がると、リュックを背負った。

「そんじゃ、ありがとうな、月島」
「おー。あ、白川」
「ん?」
「こいつのこと、頼むな。悲しませんなよ」
「――勿論」

 白川は即答して、月島に手を振った。

[ prev / next ]



[back]