5

 あっという間に土曜日。白川は違う講義をとっていたらしく、結局会うことはなかった。そして、黛だが、あの日から擦れ違っており、俺は黛にも会えていなかった。ゴミや冷蔵庫の中身から察するに一応帰って来てはいるらしい。
 早めに待ち合わせ場所に向かったが、白川はもう既に来ていた。スマホに視線を落としている姿を見て、少し緊張しながら声をかける。白川は顔を上げて俺に笑いかけた。

「おはよう」
「おはよ、ごめん待った?」
「ううん、全然。行きたいところ決まった?」
「あ、えっと、映画観たいなと思って。白川今やってるやつで興味ある映画何?」
「僕は恋愛以外なら何でもいいから、宇津木くんの観たいものにしよう」
「え、いいの? 白川ホラー平気?」
「大丈夫だよ。宇津木くん、ホラー好きなんだ」

 確かに白川がビビっているのは想像できない。俺は頷き、スマホでページを開く。黒髪の女が目を見開いた状態でバッと画面に現れる。
 怖くて面白いと評判の映画で、前から観たかったのだ。しかし俺は一人で映画館に観に行きたくないというか、観た後に語りたい奴なので、誰かを誘っていきたかった。ところが黛は勿論行ってくれるわけがないし、月島を始めとする友人たちはホラーが好きではない。白川も嫌かなと思ったが、嫌ではないようだ。ほっと息を吐く。

「これなんだけど」

 ずい、と画面を見せる。ああ、と白川は頷いた。

「CMで見たことある。じゃあそれ観ようか。えーと、ちょうどいい時間あるかな」

 白川もスマホを点け、操作する。俺も周辺の映画館のページを開いて時間を確認した。

[ prev / next ]



[back]