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『宇津木くん、大丈夫?』
「えっ」

 どきりとする。思わず顔を上げて周りを見てしまった。

『な、なんで?』
『黛くんに何かされてない?』

 何か――はされてはないけど。やっぱり黛は俺に暴力を振るわないし。

『大丈夫だった』
『それなら良かった』

 ふ、と笑みが零れる。涙は引っ込み、俺の胸は暖かくなった。たった一、二日なのに白川の存在が大きくなっているのを感じる。黛のことを長く想ってきたので惚れっぽくはないと思うんだが…。……いやというか、そういう感情とまだ決まったわけではない。普通に友情として、大切な友人としての気持ちかもしれない。

「…でも、白川はそうじゃないんだよな」

 俺のことを好きだと言ってくれた。待つと言ってくれた。俺のことを友人として見ていない以上、友人にはなれない。
 俺は真っ暗なスマホを見つめ、口角を上げる。今週はまだ講義が残っているが、一般教養科目なので、会える可能性は低い。学内にはいるかもしれないが、マンモス大学だからな。
 会えればいいな。俺はよし、と口にしてクローゼットから服を出して部屋を出る。風呂入って、軽く何か食べてから寝よう。

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