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「なんだよあいつは?」
「白川だけど…」
素直に答えた俺にイラついたらしく、ガッと壁を蹴る黛。隣から苦情が来そうだなと俺は場違いなことを考えた。
「名前なんてどうでもいいんだよ。…お前もう違う男を見つけたのか?」
「なっ…ちが」
いや――違うことはない。黛の言うことはある意味正しかった。はっと口を閉ざす俺を見下ろす黛の視線は氷のように冷たい。
「もしかして黛は嫉妬しているのでは」という考えには至らない。恐らくプライドの問題だ。俺が付き合ってやってるのに、と思っているんだろう。
俺は泣きたくなった。
「……チッ」
何も言わない俺に舌打ちすると、黛は俺に背を向けた。そしてそのまま玄関へ向かっている。
「黛、今日、夕飯は」
「要らねえ」
黛はぴしゃりと言うと、部屋を出ていった。ガチャンというドアの閉まる音と共に俺の目からぽろりと涙が零れる。ぐっと唇を噛み締めて部屋に戻る。ピカピカと光るスマホが目に入った。何となく白川ではないかと思った。スマホを手に取り白川の名前を見た瞬間安心感を覚えた。
ぐっと涙を拭いて、画面を見つめる。
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