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「ここまで来て貰って悪いな。疲れただろう」
「……あ、いやそんなには」

 実際歩いたのは一時間くらいだし、そこまで疲れたわけではない。

「てかさー、結局何だ? かずひろに会いたかっただけなのか?」
「それもあるが、おまえが世話になっている男だ。挨拶せねばなるまい」
「ふーん」

 ハジメはそれだけ言うと、テーブルの上に置いてあるクッキーをばくばくと食べ始めた。
 そういえば、例の兄貴とやらはいないのだろうか。それに――母親…つーか、男だけどもう一人の親はいないのか? 同じ種族なんだろうかとか色々気になることがあるから、ちょっと見てみたい。

「しかし、おまえがかずひろに会うとはな」
「フツーに道端で会ったぞ」
「おまえは運がいい」

 父親はちらりと俺を見ると、口角を上げた。

「和宏、おまえは知らないだろうが、おれたちは殆どそっちの世界行かないんだ」
「ああ……確かに、全然見かけませんね」

 この親子くらいだ。さっと来れそうだし、殆ど来ないのは意外に思う。

「へー、じゃあ運命だな!」

 な、とハジメが俺に笑いかける。……また、恥ずかしいことを。俺は目を逸らしてそうだなと口にした。

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