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「……え、ここ?」

 俺は近所の神社の前で、鳥居を見上げながら呟いた。

「ここが入り口になってるんだよ」
「…まあ、なんとなく分かる気がするけど」

 少なくとも普通の民家よりは納得できる場所だ。神社って何だか不思議な雰囲気を持ってるしな。

「それで? どこから行くんだ?」
「こっちこっち」

 ハジメに腕をとられ、引っ張られる。鳥居を抜け、神社の奥へと進んでいくハジメ。不思議なことに、境内に人の姿はない。平日の昼とはいえ、人の姿がまったくないのは少しだけ不気味だ。
 ……ハジメが何かしたのだろうか? それともこの神社がただこういう雰囲気なだけ?
 そんなことを考えていると、神木に辿り着いた。大きくて神々しいそれに思わずほう、と息が漏れる。

「しっかりおれの手、掴んどけよ」
「え? ……お、おう」

 俺はぐっとハジメの手を握り締める。ハジメそれを確認すると、神木に手を当てた。そして次の瞬間、神木が光に包まれた。眩しくて、ぎゅっと目を瞑る。

「かずひろ、目ー開けてみ」

 ハジメに言われそっと目を開けると、俺たちは森の中にいた。


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