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 山本とハジメが何故か結託し、俺は結局ハジメと付き合う――ということになってしまった。なんで俺、人間でもないやつ、しかも男と付き合うことになってるんだ。
 山本と別れ、家に帰る俺たち。ハジメはうきうきとしており、俺は言わずもがなどんよりとしている。あのキスはやっぱりそういう意味でやっていたっていうことは分かったが、何故俺を、という疑問が残る。
 ハジメは俺の言いつけを守り、道中は俺に話しかけることはなかった。しかし俺の部屋に入った瞬間、ハジメがぎゅっと俺を抱き締める。ひんやりとして、俺の体温がハジメに奪われる。

「ちょ、」
「はー、家じゃないとこうできねーのきついなー」

 俺は今もきついんだが。体温的な意味でも。

「おい、離れ――」
「ない! だってここしか無理なんだろ? いいじゃん少しくらい」

 いいじゃんって今日何回も聞いたな。しかし、今までの敬意からも分かるように、……俺はこいつのこの顔に弱い。

「……少しだけな」

 俺は溜息を吐いて、ハジメを受け入れた。

「キスしていーか?」
「いや、それは無理」
「無理ってひどくね!? もう一回してるしいいじゃん」

 でた、「いいじゃん」こいつもしかして分かってやってるのか?

「……む、無理」

視線を逸らし、拒否を試みる。だってあの牙だし……。


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