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 まさか、同性愛者の意味すら知らないとは。――そうだ、こいつらも男女同士で恋愛するものだと思っていたが、いや、というかそもそも恋愛する前提で考えるのもおかしいが、……こいつらは男同士でもいいのかもしれない。

「なるほど、あんた、なんで近藤が嫌がってんのか分かってないんだな」
「……は? 何?」

 ハジメは目を細めて、山本を睨むように見た。

「俺たちは女が恋愛対象だから、お前はその対象じゃないんだよ」

 な、と山本が同意を求めてくる。俺は頷いて、ハジメの反応を窺った。

「っ、えええええ!? まじで!?」

 ハジメは一瞬止まったあと、かっと目を見開いた。――つまり、本当に恋愛対象が男、もしくは男でも良いようだ。

「え、じゃあかずひろはおれと付き合いたくないのか…?」

 しょんぼりした顔で俺を見つめるハジメに、う、と俺は口籠もる。そんな顔で見つめないでほしい。

「いいじゃん、付き合えば」

 山本、お前は一端黙ってくれ。

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