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「――ま、そういうことで」
「分かった」

 山本は小さく頷く。俺はリュックを背負うと、立ち上がる。

「山本は次もあるんだよな」
「ん。……あれ、あんたもなかったっけ」

 山本は帰ろうとしている俺を不思議そうに見上げる。俺はに、と笑った。

「休講になった」
「は? ずる」
「お前もこの前休講で一人さっさと帰ってただろ」

 数日前のことを思いだし苦笑する。むすっとしている山本に手を挙げて講義室を出た。







「ただいま」

 鍵を開け、家に入る。誰もいないと分かっていても習慣になっていて、ついただいまと言ってしまう。まあ勿論返事は――。

「かずひろおかえりー!」

 静かな家に響いた聞き覚えのある声。同時に体にどすんと衝撃がくる。

「……は」

 心臓が止まるかと思った。呆然としたまま俺をぎゅっと抱き締めたそいつは、俺が今までずっと探していた――。

「ハジメ……!?」

 ハジメだった。

「久しぶりだなー!」
「ひ、久しぶり……」

 いや、そうじゃねえだろ!

「なっ、おま、何でここに……今まで何を!?」

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