▼ 24
「――ま、そういうことで」
「分かった」
山本は小さく頷く。俺はリュックを背負うと、立ち上がる。
「山本は次もあるんだよな」
「ん。……あれ、あんたもなかったっけ」
山本は帰ろうとしている俺を不思議そうに見上げる。俺はに、と笑った。
「休講になった」
「は? ずる」
「お前もこの前休講で一人さっさと帰ってただろ」
数日前のことを思いだし苦笑する。むすっとしている山本に手を挙げて講義室を出た。
「ただいま」
鍵を開け、家に入る。誰もいないと分かっていても習慣になっていて、ついただいまと言ってしまう。まあ勿論返事は――。
「かずひろおかえりー!」
静かな家に響いた聞き覚えのある声。同時に体にどすんと衝撃がくる。
「……は」
心臓が止まるかと思った。呆然としたまま俺をぎゅっと抱き締めたそいつは、俺が今までずっと探していた――。
「ハジメ……!?」
ハジメだった。
「久しぶりだなー!」
「ひ、久しぶり……」
いや、そうじゃねえだろ!
「なっ、おま、何でここに……今まで何を!?」
[ prev / next ]
[back]