▼ 21
「いや……ちょっと、まあ……色々あって」
「ふーん」
「で、ハジメって誰だよ」山本は俺から視線を外さず、俺に訊ねてくる。
「なんのことだ?」
とりあえずとぼけてみる。しかし山本はじろりと俺を睨んだ。納得いかない答えのようだ。俺は諦めて、溜息を吐いた。
「……知り合いがここに来たと思って追ってきたんだけど、いなかっただけだ」
「なるほどね」
山本はふ、と息を吐く。そして真横を親指でさした。――そこには長い髪の女が立っている。幽霊の女だ。
「こういう知り合い?」
「――な」
こいつ、見えているのか。俺の顔は更に引き攣る。でも、ハジメのような存在が見えているのではなく、幽霊だけなのかもしれない。
「…だったらどうなんだ?」
「あ、そんなあっさり認めんだ。ふーん」
山本は、そこで初めて無表情を崩した。少しだけ口角が上がる。
「あんたの探してるもの、俺が手伝ってやってもいーよ」
[ prev / next ]
[back]