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「いや……ちょっと、まあ……色々あって」
「ふーん」

 「で、ハジメって誰だよ」山本は俺から視線を外さず、俺に訊ねてくる。

「なんのことだ?」

 とりあえずとぼけてみる。しかし山本はじろりと俺を睨んだ。納得いかない答えのようだ。俺は諦めて、溜息を吐いた。

「……知り合いがここに来たと思って追ってきたんだけど、いなかっただけだ」
「なるほどね」

 山本はふ、と息を吐く。そして真横を親指でさした。――そこには長い髪の女が立っている。幽霊の女だ。

「こういう知り合い?」
「――な」

 こいつ、見えているのか。俺の顔は更に引き攣る。でも、ハジメのような存在が見えているのではなく、幽霊だけなのかもしれない。

「…だったらどうなんだ?」
「あ、そんなあっさり認めんだ。ふーん」

 山本は、そこで初めて無表情を崩した。少しだけ口角が上がる。

「あんたの探してるもの、俺が手伝ってやってもいーよ」


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