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「――っ!」
俺は声にならない叫びを上げて、その姿に向かって走り出す。
「えっ、近藤くん!?」
遥ちゃんの声が聞こえたが、答える余裕などなく、周りの迷惑そうな目も気にせず俺はがむしゃらに走り続けた。
「ハジメ!」
気が付けば路地裏まで来ていた。行き止まりに辿り着き、漸く追い着いたと思って名前を呼ぶ。しかし――。
「……いない?」
確かに追ってきたのに。そこには誰もいなかった。どこかに逃げたんだろうか? …なんで逃げる必要がある。段々とイライラしてきて、俺は息を整えながら行き止まりの壁を睨む。…しかしだいぶきついな。もう若くないという証拠だろうか。いや、まだ二十を超えたばかりだ。運動不足ということにしておこう。
「…ハジメ」
思いのほか、か細い声が出てきた。…もう戻ろう。俺がそう思った時だった。
「ハジメって誰?」
「っ!?」
びくりと体が跳ねる。勢いよく振り向けば、今日会ったばかりの――山本直が立っていた。
「な、何でここに…?」
「あんたを追ってきた。あんたこそ、ここで何やってるわけ」
無表情で淡々と発せられる言葉。俺は引き攣った笑みを浮かべた。
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