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 それから数時間。結構打ち解けた俺たちはファミレスを後にしてカラオケへと向かっていた。俺、カラオケはあんまり行かないし歌も上手くないから正直微妙だけど、……まあ今日くらい良いか。

「ねえ、近藤くん」
「ん?」

 隣を歩いていた遥という名の女性が俺に話しかけてくる。ファミレスで向かいに座り、結構話して仲良くなった子だ。同い年らしい。

「近藤くん、時々ぼーっとしてるよね」
「えっ?」
「何もないところを見てるっていうか」

 ぎくっ、と体が強張る。きっと幽霊を見ている時のことだ。見ているつもりはないが、無意識に見ているんだろう。千草なんかは一緒にいる時間多いし何も言ってこないから、こういうことを言われるのは久しぶりだ

「そう? まあ確かにぼーっとする時あるかも」

 はは、と笑って誤魔化す。遥ちゃんはふふ、と可愛らしく声をあげて笑った。

「ぼーっとしてる近藤くん、可愛いなって思ってたの」
「か、かわ……?」

 なんだそれは。素直に喜べない。間抜けと言われるよりは確かに嬉しいけど。

「あ、ごめんね、嫌だった?」
「いや――」

 別に気にしてないよ、と良いかけた時。視界の端に見覚えのある姿が映った。

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