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 ハジメがいなくなったことは、思いの外俺にダメージを与えていた。そんなに長い間一緒にいたわけでもないのに、いないだけで落ち着かない。俺はベッドに横になって、深い溜息を吐く。暫くそうしていると、スマホがベッドの上で震えた。ぱっと表示された名前は千草だった。

「なんだぁ……?」

 スマホの画面に、『よっ! 明日暇?』と書かれていた。明日は講義もないし、暇と言えば暇だ。

『暇だけど』

 送ってすぐ既読がつき、数秒後に再び送られてきた。俺はそれを見て片眉を上げる。

『じゃあ合コン行こうぜー』

 合コン……? なんでいきなり。今そんな気分じゃないし、断ろう――と思ったら、俺が返す前に千草からメッセージが飛んできた。

『ちなみにお前もう参加ってことになってるから』
「は?」

 思わず声が出る。何でだよ。人数合わせってやつか? 

『じゃ、明日朝十時に正門前に集合な!』

 一方的に話が終わり、俺はスマホを握ったままぽかんとする。……おいおい、行く気ないのに。…まあ、でも家でこうだらだらしていても無駄な時間になってしまうし、気分転換という意味では良いかもしれない。俺はスマホを放して、目を閉じた。










 次の日。俺は正門の前で欠伸をして、千草を待っていた。俺の横を通り過ぎていく様々な人。――そして、人ならざるもの。ハジメがいなくなったことで、もしかして見えなくなってしまったのではないかと思ったが、幽霊はしっかり見えている。ということはハジメも見えるはず…なんだけど。

「どこ行ったんだ…」
「何の話?」
「っわ、びっくりした」

 ぼそりとつぶやくと、いつの間にいたのか、千草が首を傾げて俺を見た。一歩後ろには千草の友人であろう男二人。千草と喋っているところを何度か見たことがある。

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