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俺は部屋のドアを開けて、ん? と眉を顰める。ハジメの姿がない。
「ハジメ?」
呼びかけても反応がない。なら寝てるのかとも思ったが、やっぱり部屋にはいない。俺はぐぐっと更に眉を顰める。どこかに遊びに行ったんだろうか。……でも、どこかに行くときは俺にしつこいぐらい言ってきたのに、今回は何もなかった。いや、自分の好きにすればいいんだけど…なんというか、いつもがいつもだから、ちょっと変な気持ちになる。なんて表現したらいいか分からないけど。
「……ま、いいか」
すぐに帰ってくるだろう。念のため日持ちするものを買えばいい。俺は理沙に急かされる前に家を出た。
しかし、それから一週間、奴は姿を現さなかった。
「……お兄ちゃん、どうしたの? 元気ないね」
「…え? いや、別にそんなことないけど」
「なんか時々ぼーっとしてるっていうか。ねえ、お母さん?」
「うん、もしかして熱でもある?」
母さんが手をこっちに向けてきて、俺は慌てて首を振る。
「いや、ないって、熱は。考え事してただけ」
「悩み?」
「……まあ、それに近いもの」
…ハジメのことばっかり考えてしまう。あいつが悪いんだ。勝手にいなくなるから。もしかして何かあったんじゃないかとか俺に飽きて別の場所に行ったんじゃないかとか。……何で俺が心配したり寂しがったりしなきゃなんないんだよ。勝手にやってきたのはあいつの方なのに。
「…ごめん、もうご飯いいや」
俺は手を合わせて御馳走さまでしたと言うと、皿を片付けて部屋に戻った。
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