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 部屋に入ると、俺はビニール袋をハジメに渡す。

「ん? なんだこれ」
「さっき買ったパン。結構甘かったし、旨かったからお前もどうかと思って」
「おれに!?」

 目を輝かせたハジメは、ビニール袋を俺から受けとると、早速パンを取り出した。

「おお、これおれが食べてもいーやつ?」
「うん」
「やった!」

 ハジメはばりっと袋を破ると、あむ、とパンをかじった。鋭利な歯がパンに刺さったと思った瞬間、パンの半分が消える。思っていた以上に大きい一口に俺は目を瞬かせた。

「んん! 旨かった!」
「ああ、そう……良かった」

 高かったパンが一瞬で消えた……。俺は笑んで、パン儚い一生を憂いた。






 ハジメが俺の部屋に住み着いて、早一週間が経った。学習してきたのか人がいる場所で話しかけてきたり何かちょっかいをかけてきたりすることはなくなり、ハジメという特殊な存在がいるということ以外は平凡な毎日だった。

「お兄ちゃん、お菓子買ってきてー」
「え、自分で行けよ」
「私今ちょっと忙しいの!」

 と、言いながら漫画を読む理沙。まったく忙しいようには見えないんだが? ……まあいいか。可愛い妹のために買ってこよう。ついでにハジメにも何か買ってきてやるか。

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