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「ただいま」
「かずひろ! おかえりー!」
ドアを開けた瞬間飛んできたそれにぐえ、と蛙が潰れたような声が出て、背中が玄関のドアに当たる。
「おい、危ない……っていうかこういうことするなって」
理沙とか母さんに見られたらやばいんだって。じろりと睨みつけると、ハジメはにいっと笑う。
「大丈夫だって、一人は二階にいて、もう一人はテレビに集中してるし!」
「……ああそう」
そういう問題じゃあないんだけど。まあいいや。一応確認したってことで、今回は許しておこう……。って、なんかどんどんハジメに甘くなっていってる気がする。
「とりあえず離れて」
「かずひろもうどこにも行かねえ?」
「行かない」
ぱっと輝く顔。俺は苦笑した。…甘くなっていくのは、こいつがこんな感じだからだ。直っていうか、周りに全然いないタイプだから、甘やかしてしまう。…弟みたいな感じというか。犬というか。
ハジメは俺の体から離れると、大きな目でじっと俺を見つめる。ふ、とハジメの姿が誰かとダブって見えて、俺は目を瞬く。……コンタクトがずれた? いやそんなわけない。今、誰かと…。そうだ、夢の中で。
「かずひろ?」
俺ははっと我に返る。ハジメは俺の顔を覗き込んで、首を傾げた。もう誰かとダブって見えることはない。
「……いや、なんでもない」
俺はハジメから目を逸らして、首を振った。
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