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 ――結局、床で寝ないなら何が何でも追い出すぞと脅して俺のベッドは守られた。
これから何かあったら出て行けと脅せば俺の言葉をちゃんと聞いてくれるかもしれない。……まあ、それはいいとして

「うわー、なんだこの生き物。可愛い」

 テレビにはりついているハジメは興奮している。

「お兄ちゃん、どうしたの? 顔怖いよ」

 理沙が訝しげに俺を見る。それを聞いて母さんが顔を上げた。

「何? もしかして美味しくない?」
「……いや、違う。ちょっと考えごとしてて…」

 慌てて首を振る。ハジメのことを考えていたら眉間に皺が寄っていたみたいだ。

「ふーん、あ、見て見て、可愛い」
「可愛いー!」

 ハジメと理沙の声が重なる。ちらりとテレビを見ると、ハジメで画面が全く見えない。……やっぱりこいつ、見えてないんだよなあ。って見えてたら今頃全国ニュースで流れてるか。

「なあなあかずひろー! こいつなんて生き物なんだ? 食える?」

 げっ。話しかけてくるな。俺は妹たちにばれないようにぎろりと睨む。――実はさきほど、人前では話しかけてくるなと散々注意したのだ。早速破りやがった。ハジメははっと口を押さえると、へらっと笑った。反省の色が窺えない。
 ちなみになんの生き物のことを言っているんだとテレビを見たら、リスだった。……確かに可愛い。でもさっき食える? って訊いてきたよな。こいつ可愛いものを食おうとするのか? 怖すぎる。というか一体何が主食なんだ。

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