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奴の名は「ハジメ」というらしい。一つ目のハジメ、なんだかしっくりくる名前だ。
「で、お前の名前は?」
すっかり見慣れてしまった大きな目がぱちりと一回瞬きした。名前なんて教えたくないが、答えないとこいつはしつこいだろう。出会ってから間もないというのに俺は奴の性格を理解し始めていた。
「……近藤和宏」
「こんどーかずひろ」
ハジメが復唱する。奴の口から出た俺の名前はなんだか自分の名前ではないような感じがした。
「おれさ、おれのこと見えた人間、初めて会ったんだ」
「…はあ」
俺だって、お前みたいなの見えたの初めてだ。
「人間とずっと喋りてーと思ってたの」
「良かったな、叶って。じゃあ帰ってくれ」
「それでさ」
無視かい。
「おれと友達になってよ」
大きな目がらんらんと輝く。対して俺の顔は、盛大に引き攣っていた。
「い、嫌だ」
「なんで!」
「なんでって、むしろなんで俺が友達にならなきゃいけないんだ」
「そりゃあ、こうして運命の出会いをしたわけだし?」
ハジメの頬がぽっと赤くなる。確かに運命の出会いと言えば運命の出会いなのかもしれないが、俺にとってはマイナスでしかない。
「なあなあ、お願いだって。友達になろう」
ハジメがベッドの上で跳ねる。俺はやっぱり、こいつってしつこい性格してる、とげんなりしたのだった。
「……俺と友達になったって、なんも楽しいことないぞ」
「そんなことないし」
「おれ、こんどーかずひろで良かったと思ってるよ」ハジメはきょとんとした顔で口にした。その顔からは悪意なんてものは感じられず、――悪いやつではなさそうだと思った。
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