ぎょろりと目が笑う。

人外(一つ目)×大学生








 俺は小さい頃から人でないものの存在が見える。つまりは、幽霊だ。昔は親や友達に人ならざるものの話をしては気味悪がられたけど、流石に今はその話をしないし、向こうに俺が見えることを気づかれたら厄介なことになるので、見て見ぬふりをする。
 今日も俺は、人ならざるものの姿を見た。

「なぁ、おれの話きーてんの?」

 ぎょろりと大きな目で俺を見て、そいつはニヤリと笑った。








 もう一度述べるが、俺が見えるのは人ではないとは言え、元は人間である幽霊だ。幽霊しか見たことがない。

「おーい」

 たらりと汗が流れる。顔の半分が丸い目のそいつは、鮫のようにギザギザの歯をしている。そしてその丸い目は一つしかない。俺の頭に某目玉の親父が姿を現す。――こいつは、人間ではない。
 俺は慌てて踵を返した。もう十二月だというのに、びっしょりと冷や汗を掻いている。

「ちょ! え、お前おれのこと見えてんだよね!?」

 これは幻覚なのかもしれない。いや、夢か? とにかくこんな妖怪のようなやつがこの世に存在なんてするわけない。

「おーいって!」

 がしりと腕を掴まれる。ひんやりとしていて、やっぱり人間の体温ではない。同時に、奴の存在を認めてしまった。

[ prev / next ]



[back]