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「……あの、会長」
「ん?」

 このままじゃゲームに集中できない。俺は緊張で震えそうになる口に力を入れて声に出した。

「お、俺…まだそういうの、良くわからないんですけど、会長の気持ち嫌じゃなかったと言うか、嬉しいと言うか…と、とにかく、試してみたい、と思うんですが」

 言い切った。俺は会長の反応を見るのが怖くて、じっと画面を凝視する。――しかし、一秒、二秒と経つが反応がまったくない。耐えきれずに、そっと横目で確認する。

「……え」

 会長が両手で顔を覆っていた。指の隙間から見える赤く染まった肌にどきんと心臓が跳ねた。つられて顔が赤くなるのが分かる。

「……まじで?」
「え、は、はい…」

 見えていないだろうが、俺は小さく頷く。そして手の甲を頬に当てた。ひんやりとして、熱が少し冷めていく。

「…試すっていうのは、どこまでしていいわけ」

 ぱっと手が外れたかと思うと、会長はぐいっと顔を近づけてきた。視線が思わず口にいってしまう。

「ど、どこまで…とは」
「キスまではいいのか?」
「キス…」

 再び顔が熱くなった。ど、どうなんだ。お試しでキスは普通ありなのか。っていうか俺はどうしたいんだ。分からない。

「と、とりあえず試してみる、っていうのは…」

 引き攣った笑みで答えて、自分でなんじゃそりゃと心の中でツッコんだ。

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