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 俺が動かないでいると、痺れを切らした会長が俺の頬を引っ張る。じんわりとした痛みに俺は我に返った。そしてその瞬間、今さっきのがファーストキスであることに気が付いた。再びショックで硬直する。

「せめてなんか反応しろよ」
「だ、だって…」

 俺が震える声で話し始めると、会長はぱっと手を放す。元の位置に戻った痛みの残る頬をさすりながら、涙目で訴えた。

「お、俺のファーストキスが…」
「は」

 会長は目を丸くした。そして俺を馬鹿にしているのかなんなのか、にやりと笑う。

「へえ、お前俺が初めてなのか」

 そりゃあ会長みたいま人だったらキスだって済ませているだろうが、俺は今までゲームばかりしてきた男だ。彼女なんて作っている暇なんてない。……と高橋と二人で言っている。

「じゃあ責任とって俺が付き合ってやるよ」
「……どこにですか?」

 あ、ゲーム? 俺が首を傾げると、会長は呆れたように俺を見た。

「お前、今の流れで分かんねえか? つまり、こういうことだよ」

 いや分かんねえよ、と思った瞬間、再び俺の唇が素早く奪われた。突然のことでよけることができず、ファーストどころかセカンドまで捧げてしまった。まさか付き合うっていうのは恋人になるってこと? ファーストキス奪ったから責任とって恋人になるなんてわかるわけがないだろ! そもそも俺男だし、会長も男だし。…けど、キスをされても嫌悪を感じていない自分に戸惑う。

「か、会長は……俺のことが、好きなんですか?」
「そうかもしんねえな」

 そうかもしれない!? 会長が俺を!? 自慢じゃないがゲームしか取り柄がない俺を!?
 俺は目を見開いて、会長を見上げた。




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