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 頭では否定しつつも、いやでも、と自意識過剰もいいところな考えが頭に浮かぶ。その時、ふと遣った視線にあるものがうつる。スマホにつけられたそれは、俺があげた「マジックでGO!」のストラップだ。

「会長、あれつけてくれてるんですね」
「ん、ああ。あれな。そりゃ嬉しかったからつけるだろ。ああいうの部屋に置いてても意味ねーし」

 「お前もほら、つけてるだろ」会長が俺のスマホを持ち上げ、にやりと笑う。キャラクターは違うが、横に並べると同じ作品だとわかるストラップだ。ちょっと照れるが、これを会長を崇拝してる人が見たら俺の身が危ない。まあ、バレることはないだろう。自分で言うのも悲しいがマイナーな作品だし、一緒に並べることもない。

「気に入ってくれたなら、良かったです」

 へらりと笑うと、会長の顔がぴたりと止まる。と、思ったら会長の顔が近づいてきた。ん? と不審に思ったときには、俺と会長の距離がゼロになっていた。つまり――口がくっついていた。唖然とする俺。会長は顔を離して、きまりが悪そうに視線をそらした。

「お前、そういう顔あんますんなよ」
「……へ…」

 会長の顔はほんのりと赤い。俺は会長に何をされたのか、会長の顔色にいったいどういう意味があるのか、全てが分かった瞬間に思考が停止した。

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