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「荷物だって持ってきてんだろ」
「え、いやこれは無理矢理持たされて…」
「まあいいじゃねえか、泊まっていけよ」

 会長は口角を上げると、俺の頭をぽんぽんも叩いた。

「い、いやぁでも…」

 会長の部屋にそんな気軽に泊まっていいもんなのか? そんな俺の迷いに気づいたのか、俺の荷物を奪うと、部屋の隅に置いてしまった。

「ほら、座れ」

 会長の良い笑顔を前にして、俺は断ることができなかった。

「ありがとうございます」

 俺はちょこんと頭を下げて、椅子に座る。隣に会長も腰掛け、ゲームをスタートさせた。











「おい、武器はどっちのが良い」
「え? あー、そっちの赤い剣が良いと思います」

 会長の画面に表示されている赤い剣を指さす。最初は隣でやるのかと思っていた俺だが、やり始めると画面を覗き合ったり、アドバイスしたりしやすくて良いなと感じていた。

「…そういえば」
「はい?」

 突然真顔になった会長は俺をじろりと睨みつけるように見る。何かやってしまったのか、と身構える俺。

「…あいつとは、仲が良いのか」
「あいつ?」

 …っていうのは、もしかしなくても高橋のことか?

「仲は良いですけど…」
「へえ」

 なんだか不機嫌そうな声。ふっと頭に高橋の言葉が思い起こされた。

『気のせいかと思ったんだけどさ、お前を見た時は優しい顔してたし、お前と仲が良い俺に嫉妬したとか? って今思って』

 ……いやいやいや。まさか。

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