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 それから数十分後、俺は会長の部屋にいた。――着替えなどの荷物をすべて持って。あれから高橋を叩き起こした俺は、高橋にどうすればいいか訊ねた。高橋はなんだか微妙な顔になったが、その数分後、俺は荷物とともに部屋から放り出されてしまった。スマホに会長に怒りを買いたくないとかなんなら今日は会長のところで過ごしてくれて構わないとかなんとか書かれた文が送られてきたが、いやいや待ってくれ。会長は泊まれとまでは言っていない。俺は一体どこで眠ればいいんだよ。

「おい、どうした、上がれよ」

 玄関で頭を抱えていると、会長が訝しげな顔で俺を見た。

「……お邪魔します」
「おう」

 頭を下げると、満足そうな声。俺は会長の背中を眺めながら靴を脱ぐ。俺の荷物に気づいているだろうに、何も言ってこない。それはそれで困るんだが、俺からは言いにくいし…。
 俺は高橋の部屋とはやっぱり違う会長の部屋をちらちらと見ながら進むと、会長はPCを立ち上げていた。高橋の部屋には部屋にもともと置かれているPCだけがあったが、会長の部屋には備え付けられていない高そうなノートパソコンが二台置かれている。流石というかなんというか…。

「よし、お前はこっち使え」
「あ、ありがとうございます」

 って、その前に何時までいていいか訊かないと。高橋が寝てしまって俺が部屋に入れなくなってしまったらやばい。

「あの、何時ごろまでお邪魔してもいいんでしょうか?」
「は?」

 会長は眉を顰める。びくびくしながら待っていると、何を言ってんだという風に口にした。

「泊まるつもりで来たんじゃないのかよ」
「へ?」

 俺は目を丸くした。

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