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 隣に座って会長のプレイを褒めていた高橋だったが、それも数十分程度のこと。気が付けば高橋は横になって眠っていた。

「おおーい…高橋ー」

 高橋の体を揺すって起こすが、眉を顰めて俺の手を払っただけで、起きない。まったく、と思って画面に視線を戻すと、会長のキャラが怒っていた。足元にはモンスターの死体。俺が目を離したすきに襲われていたらしい。

『すみません、友達に気をとられていて』

 正直に話すが、会長は無言。キャラはむすりとしていて、その顔に会長の顔がダブって見えた。ゲーム中に目を離すなと怒っているんだろうか。

『友達って、さっきの奴か』
『そうです』
『もしかしてそいつの部屋にいんの?』
『そうですけど…』

 それが何か、と打つ前に会長からチャットが送り返される。

『なら俺の部屋に来いよ』

 ……ん? ならって何だ。何故そうなる…?

『その友達って寮生だろ。折角近くにいるんだからどうせなら俺の部屋でやれよ』

 『俺の部屋PC二台あるし』会長から次々と送られてくるチャット。確かに…近くでやれば、こうしてチャットを送る手間が省ける。俺はちらりと高橋を見遣った。

「高橋ー…」

 俺は一体、どうすればいいんだ。

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