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 プレイヤーはログインしたら街の端にある大きなゲートに現れる。会長もそこに現れるはずだ。

「会長はプレイヤー名なんなの?」
「秀史……えーと、そのままの名前だったよ」

 ちなみに俺の名前はユウだ。名前の裕樹をもじってつけた名前だ。会長は本名そのままつけそうだなと思っていたら、本当にそうだったから笑ってしまった。

「なんか分かるかも」

 高橋も納得したように後ろで頷いている。会長の名前ともうすっかり見慣れたキャラクターを探す。

「あ、いた」
「どれどれ?」

 高橋が身を乗り出す。俺は画面を指差した。赤髪のイケメンキャラだ。俺よりも格好良くメイクされている。

「おお! 格好良いじゃん」

 適当に作ってると思ってたと驚いている高橋に俺もうんうんと頷く。俺も意外だった。やりこんでいる俺より装備は整ってはいないけど、始めたばかりでこれは凄いと思う。

『こんばんは』
『よ』
「おお、話した」

 ……お前、会長のことなんだと思ってるんだ。まあ最初は確かにチャットあんまり送ってこなかったけど、会長ってやっぱりなんでもできる人なのか、すぐに上達したし、仕事でパソコンを使うみたいで、タイピングも速い。

「会長、普通に上手いから期待してて見てて」
「へえ、楽しみだな」

 俺はふふんと胸を張って笑う。高橋は椅子を持ってきて、隣に座った。

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