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「な、なんか怖くなかった? 会長」
「でも俺にも最初あんな感じだったぞ」
「……あ、そう。ならいいや」

 いいんかい。けろっとしている高橋に苦笑し、食券を買いに行く。……もしかして会長って人見知りなんだうか? 今まで考えたことなかったけど。俺は先ほどの会長の顔を頭から放り出すと、財布を取り出した。








「はー旨かった」

 結局俺は、唐揚げ定食を食べた。さくさくで油っぽくなくて、味付けも好みだった。

「旨かっただろ、激辛カレー」
「いやそれは旨くなかった」

 無理矢理食べさせられた激辛カレー。俺は恨みのこもった目で高橋を睨む。まだ舌がヒリヒリする。あんなものをぺろっと食べて今平然としている高橋が信じられない。絶対胃を悪くするだろ、あれは。

「あのさあ、小田原」

 突然真剣みを帯びた声で高橋が俺に声をかけてくる。俺は何、と高橋に先を促した。

「やっぱさ、会長の視線、俺に敵意を向けてた気がする」
「……ええ? 気のせいだろ?」
「気のせいかと思ったんだけどさ、お前を見た時は優しい顔してたし、お前と仲が良い俺に嫉妬したとか? って今思って」
「そんなまさか」

 会長が高橋に嫉妬? 嫉妬するような人には見えない。されるじゃないのか、あの人は。俺は高橋に違うだろうと否定したが、高橋は眉を顰めて首を傾げた。

「そうだと思うんだけどなあ」


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