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side:浩樹

 俺は一度家に帰り、親に泊まることを言ってから荷物を纏め再び学校へ向かった。

「あ」

 寮に入ると、カウンター前に立っている人物がこっちを見て目を丸くした。どこかで見た顔だと思ったら、今日会長と話していた眼鏡の人だ。

「……こ、こんにちは」

 なんで俺を見て驚いてるんだろう…? 不思議に思いながら、このまま無視するのは駄目だよなと思って挨拶をする。

「ああ、こんにちは。もしかして山渕に会いに来たのか?」

 そして俺の荷物を見て、「泊まりか?」と首を傾げる。

「いや、今日は友人の部屋に泊まるつもりです」

 何故俺の存在を知ってるのかと思ったら、会長が話したのか。

「そうか。……あまり夜更かししないようにな」
「あ、ありがとうございます」

 ……ところであなたは誰なんでしょう。最初に訊いとけば良かった。今更訊けない。

「それじゃあ、俺はここで。…この書類は明後日までに頼む」
「分かりました」

 カウンターにいる人に何かの紙を渡すと、俺に向き直る。

「君も、またな」
「あ、はい…」

 結局誰か分からないまま、眼鏡の先輩は俺の横を通りすぎていった。もしかしたら生徒会関係の人かもしれない。会長の知り合いだしな。
 俺は受付の人に名前を告げると、高橋の部屋に向かった。



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