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 シャッとカーテンが開き、終わった…と感じながら目をぎゅっと瞑った。ドキドキと心臓が煩く鳴る。

「……尋と隼人?」

 ――明だ。
 俺は血が引いていくのを感じた。見られた。見られてしまった。俺はかたかたと震える自分の手に気づき、ぎゅっと握り締めながら狸寝入りを続けた。早く出て行ってくれ、と願う。

「――んでっ!」

 苛立った声が聞こえたかと思うと、だんだんと大きな足音で近づいてくる明。

「っつ!?」

 小柄な体格にそぐわぬ力で肩を掴まれ、強制的に永良と離される。暖かい温もりがなくなり、すっと急激に体が冷えていく。明。明、何でこんなこと――。
 掴まれた肩が痛い。思わず目を開けて明を見ると、至近距離に顔がある。驚いて身を引こうとしたが、明の軽蔑の視線に捕われた。明に対して怖い、と思ったのは初めてだ。

「隼人と何してたんだよ!」
「…あ、あきら」

 どうして明はそんなに怒っているんだ…? 俺は見たこともない明の激高に真っ青になる。両肩にぎりぎりと爪が食い込み、痛みに顔を歪めた。

「あきら、手を放し――」
「お前ら、俺のことが好きなんじゃねえのかよ!」

 目を見開いた。永良が言った言葉を思い出す。「明を見てたら自然と分かった。あいつも自分に酔ってるだけってな」――じゃあ、やっぱり…。俺のことなんて何とも思っていなかったのかよ、明…。

「うぜぇ」
「…え?」

 驚いて振り返れば、直ぐ後ろに目を細めている永良がいた。その人を殺しそうな程怖い顔に、明が息を飲む。永良は無言で明の手首を掴んだ。

「いっ…! な、何すんだよ!」
「お前こそ何してくれてんだ、放せ」
「……っ!」

 明の手が放れる。ほっとして明から少し距離を取る。

「なんで…何で!」

 子供のように叫ぶ明に、永良が呆れたように溜息を吐いた。

「…確かにお前のことは好きだったかもしれねえ」
「……だ、だろ!? やっぱり――」
「でも、今は違う。他に好きな奴ができた」

 え……?
 永良の言葉が胸に刺さった。永良、好きな奴がいたのか…? いや、べ、別に俺には関係ないし。でも、どんどん自分の気持ちが沈んでいき、苦しくなった。まさか俺、永良のこと…? そんなわけない。俺は先程まで明が好きで、永良のことは苦手で……!

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