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「何照れてんだオメー」
「そういうこと面と向かって言われると照れますよ」
「そういうもんか」

 会長の顔が無駄に整っているのもある。パタパタと手で顔を扇ぎ、熱を冷ます。
 コポコポという音が止んで、会長が立ち上がる。そのままキッチンに向かっていく。すぐにお洒落なカップと共に戻ってきて、コーヒーを注がれる。そしてこれまたお洒落な砂糖の入れ物を差し出された。

「ありがとうございます」
「ん」

 いただきますと口にして、砂糖をざーっと入れる。会長の目が入れすぎだろと物語っているが、これでも控えめなのだ。これくらい許してほしい。
 俺は湯気の立っているコーヒーカップを両手で包む。会長は優雅にコーヒーを飲んでいる。……俺はブラックが飲めない上に、猫舌なので少し冷めないと飲めない。
 カップを持ち上げて、ふうふうと息を吹き掛ける。湯気が会長の方へ流れていった。ちょびっと飲むと、苦味が口に広がった。コーヒーのことは良く分からないが、いつも飲んでるコーヒーより美味しいということは分かる。
 ばり、とスナックの袋をパーティ開きにすると、会長はパリパリと食べ出した。俺もいただきますともう一度言ってから手を伸ばした。

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