17

 向かいに座っている会長に、俺はどきどきとしていた。勉強を教えてくれる約束をした日から二日経った本日土曜日。俺は 会長の部屋に招かれていた。

「どうだ?」
「あ、ええと……この問題がちょっと」

 問題を指差し、ちらりと会長を見上げる。会長は問題を少し眺めただけで、すらすらと解き方を述べてきた。
 俺は慌ててノートにメモをとりながら、会長の解説に耳を澄ませる。

「で、ここに公式を当てはめると答えが出る」
「えーと、ということは、こうですか?」

 会長にじっと見つめられ、緊張しながら問題を解く。ぱっと顔を上げると、至近距離に会長の顔があった。ばちっと視線が合う。そのまま視線をそらすことができなくて、俺たちは見つめ合う状態になった。

「か、会長」

 小さい声で会長を呼ぶと、会長は、はっとした顔で俺から視線を外してノートを見た。……会長ってイケメンだな、まじで。思わず男の俺もどきっとしてしまった。

「……あぁ、あってる」
「あ、はい」

 良かった。俺はへらりと笑みを浮かべて次の問題にとりかかった――のはいいけど、頭に会長の視線が突き刺さっているのが気になって仕方がない。いや、そんなことを気にしている余裕なんて今の俺にはない。テストの内容が完璧になればゲームだってできるんだ。
 頑張ろう。俺は気持ちを入れ替えてペンを握り直した。

[ prev / next ]



[back]