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「あの、俺が――」
案内しましょうか、なんて今までの俺だったら絶対言わなかったであろうことを口走る。会長は頷いてくれる、そう思っていた。しかし、返答は予想していたものじゃなかった。
「いや、いい」
「あ、…そう、ですか」
「つーか、んなことよりだな、また今日もあれやんのか」
そんなことより。会長は特に意味のない言葉だったのかもしれないが、それに俺はショックを受ける。だってこれでも、俺は緊張していたのだ。あのゲームに興味を持ってくれる人なんて全然いなかったから、嬉しくて、それで調子に乗ってしまった。忘れていたけど、俺と会長は住む世界の違う――月と鼈みたいな存在だ。
「おい、聞いてんのか?」
俺はハッとする。会長は不機嫌そうに俺を睨んでいて、俺は負の感情を押し込めると口を開いた。
「すみません、ちょっとぼーっとしてて。ええと、今日ですよね。やる予定です」
「そうか。んじゃ、また連絡する」
「あ、はい」
今日もやってくれるんだ。俺は今さっき思ったことをすっかり忘れ、嬉しくなって笑みを浮かべた。
あっという間に一ヶ月。俺はというと、毎日のように会長とゲームをやっていた。流石に会長も生徒会の仕事があるから、忙しい時は一人でやっていたけど。もうすっかりこのゲームの虜だな、会長。
ふふふと笑みを浮かべると、高橋が気味悪そうな顔で俺を見た。
「ご機嫌だな、小田原」
「まあなぁ」
「さては、彼女でもできたか?」
違うと否定する前に、高橋からんなわけないかと言われてしまった。失礼な奴だな、と高橋の脚を蹴る。
「例の人とゲームするの楽しくて」
「ふーん……まあいいけど、お前大丈夫なのか?」
「え、なにが」
「テスト」
「え」
俺の顔から血の気が引いていく。
「て、テスト……。え、いつからでしたっけ…?」
「来週」
「オワタ…」
俺は絶望な気分で机に伏した。
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