10

 翌日。俺は眠い目を擦って登校した。というのも、興奮しすぎて眠れなかったのだ。俺は昨日のことを思い出し、歩きながらフフフと笑う。
 会長が、「マジックでGO!」にはまってくれたのだ。いや、会長は面白いともはまったとも言ってないんだけど、朝までずっと二人でやってたんだから、これははまったと考えてもいいだろ! いやあ、会長のこと好きじゃなかったけど、好感度上がったな。

「おはよう!」

 俺は教室に入ると、高橋の席に走り寄った。

「おお、おはよ。今日は遅刻じゃないんだな。つーか凄いクマだけどなんでそんなに元気なの?」
「いや、それがさ、興奮で寝てなくて!」
「大声で興奮とか言うなよ……で? なにがあったんだ」
「実は――」

 会長が、と言おうとして口を閉じる。危ない。大声で会長の名前だしたら俺の身が危ない。

「実は?」
「ええ、ええと……マジックでGO!にはまってくれた人がいて!」
「……え、嘘でしょ?」
「嘘じゃねえよ!」

 疑いの眼を向けてくる高橋に首をぶんぶんと振ると、高橋は呆れた顔をした。

「お前以外にあのゲームにはまる奴いたんだな…」
「俺は間違ってなかったんだ。やっぱりあのゲーム面白いんだよ」
「…ま、いいけど。それで? 誰? このクラスの奴?」

 ぎくりと肩を強張らせる。まさか訊いてくるとは思わず、俺は焦った。

「べ、別に誰でもいいじゃんか」
「いや、単純に気になる」
「お、教えたくない! 俺だけの秘密?」

 ええ、と高橋が不満そうな声を上げる。俺は担任が教室へ入ってきたのを確認し、そそくさと自分の席に戻った。

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