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 まるで俺まで汚いもの扱いだ。俺は引き攣りそうになる顔を抑え、眉を下げて笑う。愛想笑いは社会の基本だ。

「あ、すみません。じゃあ俺はここで……」
「待て」

 頭を下げて横を通りすぎた時、俺に制止の声がかかる。俺はびくりと体を震わせて立ち止まる。

「あ、あの……何か?」

 会長は如雨露を横に置くと、無言で俺にスマホを向けてくる。ずしりと質量のあるごみ袋を持ったまま俺は戸惑った。
 カシャ、とカメラの音がする。

「え」
「うん、良く撮れてんなブサイクな面が」

 ブサイク傷つくからやめてほしい。――いや、というか、何故俺は撮られたんだ…?

「ええ…と」
「お前、名前は」
「なっ、名前ですか!?」
「早く言え」
「小田原浩樹です…」
「クラス」
「一年A組です」

 答えながら俺の頭はハテナでいっぱいだ。ふうんと興味なさそうに相槌をしてるし、そもそも俺のことブサイクブサイク言ってるから、俺に何かしらの興味があるわけではないだろう。
 じゃあ何だと思っていると、会長がぎろりと俺を睨む。驚いてごみ袋を落としそうになった。

「小田原浩樹。俺がここにいて、何をしていたか――それを誰か一人にでも話したら」

 そこで一端言葉を区切ると、にいっと口角が上がった。

「この写メとお前の個人情報をばらまく。俺に付き纏うストーカーとしてな」

 俺の顔は今度こそ引き攣った。

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