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 各自お菓子を手元に置き、食べ始める。

「んー! 美味しい!」

 風莉がフルーツタルトを一口食べ、両手を頬に当てた。星矢もフォークをショートケーキに挿し込み、一口サイズに切る。星矢のその様子を皆が注目した。
 小さな口が開かれ、もぐもぐと動くのが小動物のようで可愛らしい。

「あ。美味しい…」

 ぽろりとこぼれる感想に皆がほっとする。そして優雅な空間にぼりぼりという音が響く。静貴が軽蔑の目で音を発した京を見る。

「静かに食べてくださいよ」
「こう食うのが煎餅じゃねっすか」
「だからと言って――」
「あ、でも俺それちょっと分かる」

 文句を言おうとした静貴を遮って、星矢が同意する。静貴は口を閉ざした。京はドヤ顔でやっぱそうだよなと頷いている。

「お前も食べる?」
「あ、じゃあケーキ食べ終わったら貰おうかな」
「おう」

 にいっと笑う京と、京に笑顔を返す星矢を不満げな顔をする静貴は、僕も後で貰いますと口にした。
 ちなみに風汰と風莉はお菓子に夢中になっており、遼は静貴の不機嫌な顔を見て笑っている。

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