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抱き締めたい衝動に駆られたとはいえ、京は本当に抱き締めるつもりはない。そんなことをすれば周りから抜け駆けだなんだと煩く言われるだろうし、星矢が嫌な思いをするだろうから。
むすっとしたまま去っていく星矢を見送ると、顔を覆う。今までちょっかいをかけていたのは星矢のことが好きだからということに気が付いた京の表情は、最近緩い。力を抜けばでれっとしてしまいそうになるのだ。今はまだ生徒会役員同士で牽制し合っているが、絶対星矢を手に入れてやる、と京は誓った。
「風汰先輩はコーヒーに砂糖で、風莉先輩はミルクティーですよね?」
「うん」
「あってる」
二人が頷くと、ほっと笑みを浮かべてカップを置いていく。風莉がぱっと顔を輝かせた。
「ありがと」
風汰がじっと目を見て礼を言うと、きゅっと細めた。風莉も慌てて視線を上げると、頬を上気させながらありがと、と口にする。星矢も首を振ると、照れたように笑い、自分のデスクに戻った。それと同時に、静貴が立ち上がる。
「ケーキを持ってきましょうか」
「ケーキ!? やったー!」
風莉がぴょんぴょんと椅子の上で体を跳ねさせる。隣の風汰も嬉しそうだ。対して、遼と京は微妙な顔をしている。甘いものが苦手組だ。
「煎餅とかねーんすか?」
「ありますよ」
あんのかよ。京は静かにツッコんだ。
「俺もそういう系で頼む。あー、でもコーヒーだしクッキーとかそういうもんがあればいいな」
遼はコーヒーをちらりと見ると、静貴に頼む。静貴が露骨に嫌そうな顔をしたので、遼は若干傷ついた。
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