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役員の好みを思い出しながらコーヒー、紅茶を淹れ終ると星矢は慎重に給湯室を出る。各々好き勝手していた役員たちは星矢が戻ってきた途端に顔を上げ、視線を向ける。
いくら慣れたとはいえ、いきなり視線を浴び、星矢は少し怯む。星矢の顔が強張ったことに気づいた役員たちは視線を外した。ほっと体から力が抜ける。
「ええと…副会長は紅茶ですよね」
「ありがとうございます」
にこりと綺麗な顔に微笑まれ、一瞬どきりとした星矢は慌てて首を振る。いえ、と口にすると星矢は次に遼のところへ向かう。
「遼先輩はコーヒーですよね。ブラックでいいんでしたっけ」
「おう、さんきゅ」
今度は甘ったるい笑みを向けられ、星矢はどうしていいかわからなくなる。というのも星矢はこの中で唯一遼からは告白を受けているからだ。
「お前、ほんと可愛いやつだな」
「や、やめてくださいよ」
男が可愛いと言われて嬉しいはずがない。しかし星矢の顔はほんのりと赤くなる。
「河成、俺にも早くコーヒー」
「あ、ごめん」
星矢は京の言葉にぱっと視線を京に向ける。そのすぐ傍で遼がむっとしたのに対し、京はにやりとヘビのように意地悪く笑った。
「室川もブラック…だっけ」
「いや俺ミルク入れる派」
「えっ、ごめん、急いで入れて――」
「っつーのは嘘」
「…え」
わたわたと焦って戻って行きそうな星矢を引き留め、京は今のは嘘だということを明かす。星矢の丸い目を見て京は髪を撫で回したい衝動に駆られた。
「……なんだよ、もう」
今度は抱きしめたい衝動に駆られる。むすっとした星矢は愛くるしさが増すのだ。
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