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 風莉と遼は書類の持ち主が風汰に変わったことに気づいていない。星矢はこの二人に今関わるのはよくないだろうと思い、頷く。しかしそれに文句をつけるのは今まで黙っていた静貴と京である。

「勝手に一人でやってほしいんすけどぉ? むしろ俺の方が手伝ってほしいね」
「前半には同意ですが、あなたの仕事も一人でできるでしょう。河成はこっちを手伝ってください」
「副会長の仕事もう終わりそうに見えるけど?」

 星矢は思った。この二人にも関わりたくないと。顔を引き攣らせて、風汰を横目で見遣った。

「ええと……先にこっちを終わらせようかなあ、と」
「……そうですか」

 静貴と京の顔がむすりとしたものになる。風汰はそんな二人を見て、微かに口角を上げる。二人はイラッとした。










 色々あったが、途中から皆真剣にデスクに向かっていたからか、数十分後には終わらせなければならない分の仕事が終了した。星矢はぐっと伸びをする。立ち上がると、周りに視線を遣った。

「飲み物を持ってきます。何がいいですか?」
「河成、私も――」
「あ、いえ、先程も淹れていただいたので、今回は俺が……」

 静貴としては二人きりで仲良くという下心があったのだが、星矢は全く気付かず、先輩に手伝わせるのはちょっとと断った。他の役員も、誰かが抜け駆けするよりは、大人しく待っていた方がいいと判断したのか黙って星矢を見送った。

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